看取りの判断は誰がする?看護師の圧力、一方的な考えに口を閉ざしてはダメです。

生活相談員
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 先日、あるご利用者の看取りについての相談が、同僚の生活相談員からありました。

 面会に来られたご家族に、看護師が勝手に看取りの話をしてしまった。担当の介護士も私(生活相談員)も何も聞いていない。誰も了解していない中、そういう話をしてしまった以上、看取りの方向で話が進んでしまうかもしれない。

 というもの。

 特別養護老人ホームは、「終の棲家」としての役割を持ち合わせており、今ではどの特別養護老人ホームでも看取り介護を行っているところがほとんどです。

 ただ、この看取り介護の考え方については、その事業所の嘱託医の意向などが反映されることが多く、その意向や指示に従う看護師が主導権を握りやすい状況です。

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看取り介護とは

 看取り介護とは、人が自然に亡くなっていくまで、ご本人の意思や家族の意向を大切にしながら必要なケアを行い、その人生の最期までを見守る過程のことです。

 その方らしい最期が迎えられるように、生活面・医療面・栄養面・ご本人、家族の精神面の支援していくことになります。

看取りの状態とは

 介護保険制度においては、

 医師が、医学的に回復が見込めないと判断したときに、概ね余命が6か月程度であって、老衰または病気の末期であり、あらゆる治療も病気の治癒に対して効果がない状態のことを言います。

とされています。看取りの判断においては、当然のことながら医師が行うことになります。

 しかし、医師が常に施設に常駐してる施設ばかりではないので、その判断材料は介護士や看護師などが、ご本人の状態を観察する中で得られた情報です。

 この部分において、看護師は医師とはより密接な関係性にありますから、看護師がその看取り期を判断する上で必要な情報を提供する事になります。おのずと、看護師が判断する状況が生まれやすいのです。

看取りの判断材料

 看取りを判断するものとしては、食事量の低下が上げられます。状態が低下してくると、活動量が減り、あまり栄養を必要としなくなります。そして、低栄養からさらに活動量が低下していくと、いよいよ看取り期に近づいてくるわけです。

 この過程の中で、どの段階で看取り期という予測を立てるのか?

 これが一番難しく、この過程でこそ、それぞれの職種の連携とチームとしての対応が必要になるわけです。

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看護師が看取りの判断を急ぐ理由

 前述したように、医師が常駐している特養は限られています。その中で、急変が起こった際にさまざまな判断や処置を行うのは看護師の役割です。

 日中だけでなく、夜間も何か急変が起これば駆け付けなくてはなりません。

 看取りが近づいてきているご利用者は、急に体調の変化が起きたり、誤嚥するリスクも高くなってきていますので、その対応をしなければならない確率は高くなります。

 ここで働く考えとして

看取りの同意をとっていれば、急変の対応をしなくても良いのではないか

というものです。ここでいう急変への対応とは、救急車両を要請して搬送するということになります。

 救急対応は、時間帯を問わず看護師にとっては負担が大きいものになります。医師への報告、病院への同行、その後の記録などがそれにあたります。

看取り介護の同意をとっていれば、呼吸停止していたとしても、救急搬送をしない

 ここが非常にネックになります。急変リスクが高まる前に、早く看取り介護の同意をとることは、そういったことが理由になり得るのです。

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本来の看取り介護とは

 看取り介護とは、本来はご本人とご家族のために必要なケアです。

 令和3年度介護報酬改定では、『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』 に沿って看取り介護を行っていく事が明記されました。

 この中で、看取り介護にいては、まずご本人の意向や考え方、そしてご本人が意思を示せない場合にはそれを推察しうるご家族の考え方が反映されなければならないとされています。

 その考え方を十分に受け止めた上で、施設としてできる対応を丁寧に説明し、十分に理解を得ることが大変重要です。

ご本人の意向や考え方

 これが最大限に優先され、そこに対してできる対応が、ご利用者への最善の方法となるように考えられるべきものです。

一方的な判断に潜むリスク

 入所されている方のご家族は、施設に見てもらっている以上、なかなか言いたいことが言えない状況にあります。

 一方的な看取りの判断は、施設側の意向であり、ご家族の本意ではない可能性がでてきます。

 もし、急変でお亡くなりになられた時、ご家族が不審に思えば

施設に言われたので同意したが、本当は搬送してほしかった

 ご家族の想いを十分理解し、納得して頂いた状態でなければ、こういう事につながる可能性があり、場合によっては裁判になる可能性も出てきます。

 この時の責任は、いち看護師だけでとれるものではなく、施設長などの責任問題になり、さらには事業所の信用失墜につながることを理解しておくことが必要です。

今回の件についての対応

 ご本人の状態から、まだ看取り期とは言える状態ではないものの、食事量の低下や咽やすさも見られてきている事から、近い将来に看取りになる可能性が考えられるため、そうなった場合のご家族のお気持ちを少し考えておいていただきたいということにしました。

 看取りは、人生の最期に関わるケアであり、非常にデリケートな問題です。

 だからこそ、ご本人や家族の気持ちが最優先されるべきものであると思います。

 生活相談員は、そういう想いと客観的な視点から、看護師だけでなく介護士やその他の職種の考えも理解し、受け止めながら、チームをまとめていくことが求められるのです。

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