先日、介護記録を確認していた時のこと…
僕は、この記録にめちゃくちゃ違和感を感じました。
本来であれば、ご本人の「帰りたい理由」「助けてほしい気持ち」に対して、介護職員がどのように関わったのか、どう声をかけたのか、その対応に対してご本人がどう反応したのかが記録として必要です。
しかし、記録上大声~リスペリドン内服までの間に何も存在していない状況…
せめて「お話をお聞きし~」とか「どうしてほしいのか確認すると~」くらいは最低限ないとマズいです。
なぜなら、これだけだと単なる「行動抑制」、つまり「身体拘束」や「高齢者虐待」という行為になるからです。
記録を残した介護職員の話
事業所として身体拘束や高齢者虐待につながる行為を許容するわけにはいきません。もしかしたら、お話を聞いたり、関わりをしてくれていた可能性もあると思い、対応した職員に話を聞く必要がありました。
僕の中で、希望が絶望へと変わり、ご利用者に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
そのような考え方でケアをしている人たちの中で、安心して生活できるわけがありません。
ご本人の「助けて下さい。」は、正に心の声であることを深く胸に刻みました。
常態化した大声=リスペリドンという対応
記録を読み返していくと、数名の職員が同じような記録を残しており、同じような考え方で対応をしていました。
不適切なケアの連続、これは身体拘束や高齢者虐待につながる行為です。
残念だったのは、若い職員が、話した内容や対応を記録していたのに対し、介護の手本となるべき主任が、不適切な対応をしていたことです。
このままでは、部署全体がその対応に統一されてしまうのは目に見えていました。
薬の使用を否定するわけではない
認知症の方にとって、行動・心理症状はとても苦しい症状です。それと合わせて、認知症の方を介護する家族や介護職員にとっても、対応を困難にする大変な症状でもあります。
ですから、行動・心理症状に対して薬を使用することを否定はしません。
薬によってご本人の苦しみや不安が軽減され、職員が関わることで、その方が安心した生活を送れるのであれば、使用することで効果が出る場合があるからです。
薬を使用する場合に考えてほしいこと
前述したとおり、薬の使用を否定するわけではありません。
しかし、使用にあたってはいくつかのプロセスや薬の効果・副作用についても理解しておくことが必要です。
具体的には、以下のような内容です。
1,行動・心理症状として、強く症状が出ているものであって、介護する側の負担が大きい症状の確認
2,その症状が出現する要因の分析
3,要因に対してできる誰もが実践可能な対応策
4,薬の効果と副作用の確認
5,副作用により考えられるリスクの検証
1~3については、行動・心理症状が出現した場合に、どのようなケアを展開していくのかを検討するために必要なプロセスです。
具体的な流れについては、下記ブログ記事が参考になります。
4~5については、薬を使用する場合に検討が必要な内容です。薬の使用は、症状を改善させる可能性がある一方で、新たな症状を生む原因にもなります。
また、薬の副作用によっては、様々なリスクが発生することも理解しておかなければなりません。
使用される薬の種類と効果、副作用については下記ブログ記事が参考になります。
行動・心理症状へのアプローチを行い、そのプロセスをきちんと記録に残しつつ、必要に応じて薬の使用を検討していくことが重要です。
認知症ケアは難しいけど
認知症ケアは、何か対応したからといってすぐに結果が出るものではなく、要因分析やケアの見直しを行いながらPDCAサイクルを回していく必要があります。
時間はかかりますが、それが遠回りであるようで実は近道だったりします。
いずれにしても、「症状=薬」という考えだけではなく、認知症の方ご本人にとって、最善のケアと安心できる環境を作っていきたいですね。
「じゃあ、どうすればいいんですか。話聞いても大声は止まらないし、他の人の対応だってあるんです。実際に見るのは私たちなんですよ。」