【あなた大丈夫?】高齢者虐待につながる「不適切なケア」が起こる要因とその予防方法

介護福祉士
スポンサーリンク

 こんにちは、『福祉のクズきち』です。

 今回は、先日施設で担当させて頂いた「高齢者虐待防止に関する研修」から不適切なケアについてお話させて頂く内容です。

 不適切なケアとは…

  • ご本人やご家族が不快感や悲しみを感じるケア
  • ご利用者の同意を得ることができないケア
  • 意思確認できないご利用者でも、その方の最善の利益が守られていないケア
  • 法令や契約書の内容に反する可能性があるケア

 これらのケアが、気づかないうちに許容され、継続的に行われていくと、高齢者虐待につながる可能性が高くなります。

高齢者虐待につながる前に不適切なケアの段階で防ぐことが重要

 不適切なケアを防ぐためには…

  • 不適切なケアを共有すること
  • 職員のケアの重要性を理解すること
  • 介護の知識とスキルを身につけること
  • 接遇に関する知識を身につけること

 が必要になります。

 まずは、不適切なケアが起こる要因について解説していきます。

スポンサーリンク

不適切なケアが起こる要因

 介護の現場の実情として、慢性的な人員不足があげられます。その中で、生活全般に介助を必要とするご利用者や認知症のご利用者の関わりなどで多くのストレスがかかっています。

 いくらご利用者の生活と笑顔のためにやりがいを持って仕事をしていても、時に日ごろのストレスからつい感情的になってしまうこともあるかと思います。

 また、疲れや業務時間などからご利用者のできるところまで手を出してしまったり、時間内に仕事を終わらせることを優先させてしまったこともあると思います。

 不適切なケアには、いろんな要因が関係しているんです。

不適切なケアが起こる要因① 組織の理念・方針が不十分

 自分たちが目指す職員像が共有もしくは示されておらず、事業所が目指す方向性が定まっていない場合に、独りよがりの介護になりがちになり、結果として不適切なケアにつながる要因となります。

 介護における主体性や生活を中心とした理念や指針がなく、業務中心の考え方になってしまうと、

ご利用者⇒モノ  介護・ケア⇒作業

 になってしまいます。

 きちんとした指針や理念などが示されているか?

 その指針や理念がしっかりと共有されているか?

 確認をしておく必要があります。

不適切なケアが起こる要因② 認知症の知識不足・BPSDへの対応が不十分

 認知症のご利用者に対しては、不適切なケアが起こりやすいです。

 職員が思いがけない時に動き始めたり、突然大きな声を出されたり、口調が強くなったりすることがあります。

 目の前で起きている言動に対しての対応ばかりに意識がいくと、その行動を抑えようとする言葉がけや対応になります。

行動・心理症状(BPSD)は、環境によって症状の改善が見込まれる

 このことが理解されていないと、ただ目の前で起きる事に対応するだけで、改善も見込めず職員のストレスも増大していく可能性があり、結果として不適切なケアにつながることになります。

不適切なケアが起こる要因③ 職員のストレス

 慢性的な人手不足や認知症ケア、看取り介護や夜勤など多忙な業務の中で、職員のストレスは大きいものになります。

 特にストレス過多の状態が続くと、感情のコントロール、特に怒りの感情のコントロールが難しくなります。押し殺していた感情が抑えられなくなると、その感情がより大きいものになります。

 感情を表現すること自体は、人間にとって自然なことです。怒りの感情がない人はいませんし、防衛感情でもあります。

セルフマネジメントと合わせて管理者は、職員の様子や仕事ぶりに関心を持つこと

 職員個人としては、体調管理やアンガーマネジメントなど感情のコントロールに関心を持つこと、管理者は、職場の環境や人間関係、職員の様子などに気を配る必要があります。

スポンサーリンク

不適切なケアの具体例(一部)

●ご自分で着替えができるにも関わらず、職員の業務や時間の都合で全て介助する

●トイレに行きたいと希望があるが、少し前に行ったからと「さっきも行ったでしょ。」と後回しにして、その後も関わらない

●入浴を嫌がる理由を確認せずに、「ずっと入っていなから。」と無理に入力させる。記録に「入浴拒否」とだけ書く

●立ち上がるご利用者に「座っててください。」と言う

●ご本人の目の前で申し送りや排せつ状況など、プライバシーに配慮せずに話をする

●車椅子から立ち上がれないように、テーブルに深く差し込む

など。

スポンサーリンク

不適切なケアを防ぐために

 不適切なケアを予防するためには、ただその行為自体を禁止とするだけでは効果がありません。

 その背景にある介護職員のストレスや負担を軽減し、その他の問題点を改善することが重要です。

不適切なケアを共有する

 自分が不適切なケアだと思っていなくても、他の職員やご家族などが違和感を感じるようなケアは不適切なケアである可能性が高くなります。

 客観的にそのケアについて考えていく必要があります。

 この場合、定期的に不適切なケアを共有する事が必要です。

職員それぞれが普段のケアで「不適切なケア」だと感じている事を出し合い、それをチームで共有する

 これによって、施設内や部署内で不適切なケアを意識する事ができ、お互いに注意し合ったり、意識を高めていく事ができます。

 「これって不適切なケアになる⁈」このような迷いがなくなるだけでも、職員のストレスの軽減になります。

職員のケアの重要性を知る

 不適切なケアの要因で、職員のストレスについて触れさせていただきました。

 組織全体として、職員のストレスマネジメントに取り組むことが重要です。職員に対して組織的な支援が考えられていない施設では、個々のスタッフにもストレスが発生しやすいと言われています。

組織全体で職員のストレスマネジメントに取り組むことが必要

 まず、「不適切なケア」を全くしたことがない介護士はいないことを認めることから始めましょう。

 「不適切なケア」は、行ってしまった本人だけを責めるのではなく、不適切なケアにつながった要因や職場環境見直し、業務の改善などが必要です。

介護の知識とスキルを身につけること

 「不適切なケア」は、認知症の方への関わりで起こる可能性が高くなります。また、自分でできることを本人のためと思い介助してしまうことは、寝たきり老人にしてしまう可能性もあることから不適切なケアとなってしまうのです。

いいご利用者 ⇒ 職員にとって都合のいいご利用者にならないようにする

 認知症について正しく理解すること、ご利用者と職員がお互いに負担なくできる介助方法を習得することなどが求められます。

接遇に関する意識

 介護職は、ご利用者の安心した生活を支えるためのサービス業でもあります。

 おもてなしの心を持って介護に当たる事が重要です。

 そのため、日頃からの言葉遣いや態度、気づきや配慮など、接遇に関する視点を学び、普段の業務内で意識していく事が重要です。

 接遇の重要性についてはこちらの記事で解説しています。

最後に伝えたいこと

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

 「不適切なケア」は、その行為が見過ごされてしまうと、いずれ高齢者虐待につながってしまう可能性があります。

 一方で、「不適切なケア」は誰しもがしてしまっている可能性があることを認めることも重要です。

 私たちの仕事は、身体的にも精神的にも負荷の強い仕事です。ですので、職員間でも組織としても、「不適切なケア」についての考えや行動を共有し取り組むことが大切です。

 本日のお話はここまでです。ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました